Cafe Panic Americana Book Review

管理人・大串尚代(慶應義塾大学)による書評のページ。旧CPABR (http://www.flet.keio.ac.jp/~pcres)からリニューアル。

書評 遠藤不比人編『日本表象の地政学――海洋・原爆・冷戦・ポップカルチャー』(彩流社、2014年)  評者:上田裕太郎(慶應義塾大学大学院修士課程2年)

公平「有」私な日本像 洋食屋でサラダを頼む時、「ドレッシングは和風と洋風どちらにしますか?」と聞かれたことは誰でも一度はあるだろう。選択に迷った時ほど、しばしば和風ドレッシングを頼みたくなってしまうのは私だけではないはずだ。「ああ和風が美味…

書評 遠藤不比人編『日本表象の地政学――海洋・原爆・冷戦・ポップカルチャー』(彩流社、2014年)  評者:小泉由美子(慶應義塾大学大学院博士課程1年)

日本人を演じる日本人 わたしが敬愛してやまない作家・色川武大は、『麻雀放浪記』や『狂人日記』が比較的よく知られ、博打やナルコレプシーのイメージが強いけれども、なにより、少年期からアメリカ映画にどっぷり浸かっていた人物だった。彼は1987年から『…

書評集:『日本表象の地政学―海洋・原爆・冷戦・ポップカルチャー』

慶應義塾大学大学院(英米文学専攻)の学生による書評を今年も発表していきます。今年の書評対象書籍は、遠藤不比人編『日本表象の地政学—海洋・原爆・冷戦・ポップカルチャー』(彩流社、2014年)です。

書評『環大西洋の想像力—越境するアメリカン・ルネサンス文学』 評者:田ノ口正悟(慶應義塾大学大学院博士2年)

アメリカ古典文学の「味」 「何度食べても美味しい。それが古典といわれる作品です。」高校時代、国語の授業中にある先生がこう言っていた。耐えられない眠気のために授業中は意識を飛ばしてしまっていることが度々あるわたしだったが、10年以上経った今でも…

書評『環大西洋の想像力—越境するアメリカン・ルネサンス文学』 評者:大島範子(慶應義塾大学大学修士2年)

揺らぐアメリカ 竹内勝徳・高橋勉の編集による本書『環大西洋の創造力―越境するアメリカンルネサンス文学』は、かつてF. O. マシーセンが1941年に「アメリカン・ルネッサンス」として位置付けた時代、すなわち、19世紀半ばのアメリカ文学に着目する。批評対…

書評『環大西洋の想像力—越境するアメリカン・ルネサンス文学』 評者: 細野香里(慶應義塾大学大学修士2年)

枠組みのその先へ―融解する国家と文学研究の今後 例えば、書店の海外文学コーナーに足を運んでみて欲しい。アメリカ文学、イギリス文学、フランス文学、ドイツ文学……。万国旗のように並んだ仕切りの表示を見ながら、これでは単体の仕切りの作られていない国…

書評『環大西洋の想像力—越境するアメリカン・ルネサンス文学』 評者: 永嶋友(慶應義塾大学大学修士2年)

ダイナミックな越境から日常的な越境まで 文学研究者は独自性を追求し過ぎると、自分の視野を狭めてしまうことがある。私を含めそのような悩みを抱く研究者にとって、大陸を横断するというダイナミックな読み方を提示するトランスアトランティック研究は、そ…

書評『環大西洋の想像力—越境するアメリカン・ルネサンス文学』 評者: 遠藤容代(慶應義塾大学大学院博士3年)

納まりきらないことの魅力 「アメリカ文学」の歴史を考える上で、F. O. マシーセンの『アメリカン・ルネサンス』(1941年)が果たした役割の大きさは、誰もが認めるところであろう。マシーセンは、国家としてのアメリカの隆盛と軌を一にしながら、世界文学たり…

書評『環大西洋の想像力—越境するアメリカン・ルネサンス文学』 評者:坂雄史(慶應義塾大学大学院修士1年)

裏返しのアメリカ文学 私が旅をするのは予見していたことが裏切られ新たな出会いをもたらしてくれることへの喜び、驚き、感動、そういった感情を味わいたいがためだ。竹内勝徳・高橋勤編『環大西洋の想像力』もそうした出会いを私にもたらしてくれた。昨今の…

書評『環大西洋の想像力—越境するアメリカン・ルネサンス文学』 評者:青柳萌里(慶應義塾大学大学院修士1年)

揺らぐ「境界」―大国アメリカの不安と想像力 我々の住む日本という国家は98.5%[i]が単一の民族で構成されている上に、移民政策を積極的に進めているという訳ではない。ガイジンという言葉に代表されるように、日本の多くの人にとって、国家の内と外の区別は…

書評『環大西洋の想像力—越境するアメリカン・ルネサンス文学』 評者:濟藤葵(慶應義塾大学大学院博士3年)

国家の枠組みとは何か 昨今のニュースからも推察されるように、島をめぐる領土問題は、決着がつきがたい頭を悩ます問題のひとつである。たとえば、日本と、中国、韓国、ロシアといった周辺諸国との衝突や、各国による領土認識の差がたびたび報道される。国境…

書評『環大西洋の想像力—越境するアメリカン・ルネサンス文学』 評者:塚本紗織(慶應義塾大学大学院修士1年)

批評の大海に浮かぶ孤島の群れ 本書『環大西洋の想像力』は、九州の研究者が中心となったプロジェクト「大西洋交易の変容とアメリカン・ルネッサンス」の成果を一冊にまとめたものである。「アメリカン・ルネサンス」とは米文学者F. O. マシーセンが1941年の…

書評『環大西洋の想像力—越境するアメリカン・ルネサンス文学』 評者:上田裕太郎(慶應義塾大学大学院修士1年)

「身体で感じるアメリカ文学」 ある日、私は授業の課題のために19世紀アメリカン・ルネサンスの小説を読んでいた。具体的な名前を出すと、フレデリック・ダグラスやハーマン・メルヴィルである。これらの作家の時代というのは歴史的に見ても、アメリカが自国…

書評『環大西洋の想像力—越境するアメリカン・ルネサンス文学』 評者:小泉由美子(慶應義塾大学大学院修士2年)

「光と闇の薄暗さ」 もし私たちの心が、アメリカの光と闇というテーマに捉えられるならば、それは光と闇の明暗法に魅了されるからかもしれない。パクス・アメリカーナの栄光と、先住民・奴隷・移民への抑圧の歴史。エマソンを透明な眼球へと導いた啓蒙の光と…

環大西洋の想像力(彩流社、2013年)

私の大学院の授業の履修者による、竹内勝徳・高橋勤編『環大西洋の想像力−−越境するアメリカン・ルネサンス文学』(彩流社、2013年)の書評を近日中にアップします。